● 鑑賞日:2025/12/17(水)

はじめに
私はもともと歴史が好きで、過去の戦争についても「知りたい」「知らなければならない」という気持ちは強い方だと思っています。
ただ、史実をきちんと追おうとすればするほど、あまりにも情報量が多く、その一つひとつの出来事が重くのしかかってきて、心が追いつかなくなってしまいます。数字や年表の裏側にある現実を想像すると、つらくなりすぎてしまい、最後まで向き合えなくなることも少なくありません。
そのため、私にとって戦争の歴史と向き合う手段は、マンガやアニメがほとんどでした。
だから、原作マンガ『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』の存在を知ったとき、
「読まない」という選択肢はありませんでした。
恥ずかしながら、それまで私は「ペリリュー」という名前すら知りませんでした。
パラオで激しい戦闘があったという事実を、記録として断片的に知っていただけです。
可愛らしい絵柄からは想像できないほど描かれている内容は悲惨で、読み進めるのがつらい場面も多くありました。それでも、読み終えたときには「知れてよかった」と、はっきりと思えた作品でもありました。
映画化の情報を知ったのは、その原作を読んでからほどなくして。
「この出来事に向き合って、より多くの人に伝えようとしてくれている人たちを応援しよう」という気持ちが強く湧き、自然と「絶対に観よう」と思っていました。
(なかなか公開情報が出なくて、企画が立ち消えになってしまったのかと長い間心配していたのは秘密です←言ってる)
ペリリューの戦いとは
映画理解の補助として、生成AIに「ペリリューの戦い」についてまとめてもらいました。
ペリリューの戦いは、第二次世界大戦中の1944年9月から11月にかけて、南太平洋・パラオ諸島に属するペリリュー島で行われた、日本軍とアメリカ軍による激しい地上戦です。
戦いの背景
当時、アメリカ軍はフィリピン奪還を視野に入れ、進撃ルート上にあるペリリュー島を攻略しようとしていました。
島には日本軍の飛行場があり、これがアメリカ軍にとって脅威になると判断されたためです。
一方、日本軍はすでに制空権・制海権をほぼ失っており、援軍も補給も期待できない状況でした。それでも「一日でも長く敵を食い止める」ことを目的に、島を死守する構えを取ります。
戦闘の特徴
ペリリュー島の戦いで特筆すべきなのは、日本軍の戦術の変化です。
それまでの「バンザイ突撃」ではなく、
● 島の地形を利用した洞窟陣地
● 地下トンネルによる持久戦
● 小規模な反撃を繰り返す消耗戦
といった戦法が取られました。
ペリリュー島は高温多湿で、水や食料も極端に不足。
日本兵は飢えと渇き、負傷、病気に苦しみながら、洞窟の中で戦い続けました。
想定を超えた激戦
アメリカ軍は当初、この島を「数日で制圧できる」と見積もっていました。
しかし実際には、日本軍の徹底した防衛によって戦闘は長期化し、2か月以上にわたる激戦となります。
アメリカ軍も甚大な被害を受け、「割に合わない戦いだった」と後に評価されることもあります。
戦いの結末
最終的に島はアメリカ軍によって制圧されましたが、
◆ 日本軍守備隊 約1万人のほとんどが戦死
◆ 生存して投降した兵はごくわずか
という、事実上の全滅という結末でした。
ペリリュー島の戦いは、勝敗が決していた中で、
それでも「生きて帰れない戦場」に立ち続けた人々の戦いだったのです。
原作(マンガ)について
| 作品名 | 『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』 |
| 作者 | 武田一義 |
| 巻数 | 本編11巻 :ペリリュー島に日本兵が入ってから日本へ帰還するまで + 外伝4巻 :本編に入らなかった島でのできごとや、戦後の生き残った兵士たちの人生 |
| 作品の特徴 | ・可愛い絵柄と内容の凄惨さのギャップがえぐい ・でもこれが、実際にあった出来事を描いているという事実もえぐい |

私は本編11巻と、外伝2巻までは読んでいます。
3巻と4巻は出ているの知らなかったなぁ。
映画のストーリー展開
基本的には、原作のストーリー展開と同じです。 映画の上映時間は100分ほどですが、その内訳(体感)はこんな感じ↓
- 戦闘に備えて島を整備:15分
- アメリカ軍上陸・戦闘:20分
- 物資奪取&潜伏 :40分(ここが長く感じたと言いたいだけです)
- 仲間割れ→日本へ帰還:25分
戦闘シーンよりアメリカ軍から物資を定期的に奪取する道筋をつけて潜伏し続けるシーンが長く描かれたのが意外でした。
でも、実際のペリリュー島の戦いでも、戦闘は2か月ほどで、潜伏期間が2年くらいですもんね…。原作では、当たり前ですが戦闘時において印象的な(ショッキングともいう)エピソードが多かったので、その部分を最低限に収めたのには「思い切ったなぁ」と思いました。
まぁ、原作も「ペリリューの戦い」を知らない人への配慮でしょう。
できるだけ多くの人に伝えたるためには必要なことですね。
ただ、潜伏時のシーンが長い=田丸くんと吉敷くんが比較的穏やかに過ごせていた時間が長いだけに、吉敷くん死亡シーンの喪失感とやるせなさは、原作より映画の方が強く感じました。
原作既読の私から見た映画の感想
良かった点
- 原作の本編部分を、短い時間で上手に収めていると思いました。分かりやすいストーリー展開で、原作を読んでいない人でも困らないと思います。
(でも、田丸くんたちが『ゴジラ』を観てるシーンは原作未読の人には唐突に感じるかも) - 映像が美しい!戦場になる前の島の自然の美しさが素晴らしく、それだけに焼け野原になった後に感じる悲惨さは原作よりも倍増しました。また、戦闘後に元の美しさを取り戻していく様子に、自然の無情さを感じて空恐ろしい気持ちも抱きました。
- 血に染まった海、四散する兵士、戦車や爆撃機に色・動き・声(音)がついたことでの迫力がすごかったです。可愛い絵柄ではごまかせてませんでしたね。目を細めて観るシーンもありましたし、何回か大きな音に驚いて体がビクッとなりました。
吉敷くんの目が落ちるシーンの動きには、知っていたのにも関わらず「うわっ」と(小さいけど)声が出ちゃいました。 - 田丸くん投降後にアメリカ軍の人が言った『Crazy.』に瞬間的に「はぁ!?💢」と思いました。そんな自分にびっくりしたので書き残しておきます。
原作をこのシーンを読んだときにはここまで強い感情は抱かなかったので、これも声がついたからこそですよね。 - 声優さんの演技が上手い!
田丸くん役の板垣李光人さんも、吉敷くん役の中村倫也さんもとても上手で違和感なく観られました。
他キャラを担当した声優さんたちについては、申し訳ないことに存じ上げない方たちばかりだったのですが、本当に各キャラにぴったりあった声で感激しました。
おかげさまでストーリーに集中できました。 - 入来さんが生還できた展開は嬉しかったです。
吉敷くんは遺体が行方不明になったりせず、日本に帰還できたのは良かった。
(原作の展開は、帰還後の田丸くんの結婚相手やペリリュー島との関わり方に影響を与えているはずなので大事な要素だと思うのですが、映画ではそこまで描かないからこそ、せめてもの救いを感じられるように観客へ配慮してくれたのだと思います。)
物足りなかった点
- 一番は、やっぱり尺!しょうがないとは理解しつつも・・・
- 兵士一人一人に背景があり、思いがある。絶望しかない島の中でも、家族のために戦い、家族のもとへ帰りたいと願う。本来尊重されるべきものなのに、あっけなく散っていく命。その虚しさをよくよく感じさせてくれるのは、原作で各キャラクターを丁寧に掘り下げ、読者に感情移入させてくれたが故。
そういった部分は、映画ではやっぱり描き切れないですよね。
分かってるんですけど、戦争の残酷さと救いのなさを描き切った作者さまに敬意を感じたことがこの作品を好きになった理由の一つであったので、やっぱり映画では物足りなく感じてしまったというか…。
決して残酷なシーンが観たかったわけではないし、原作通りの話だったら途中で耐えられなくなった可能性が高いんですけど…。難しいですね💦 - 小杉伍長や片倉兵長、入来さんは原作でも魅力を感じてたキャラだったのですが、分かりやすいキャラ造形になってたり、影が薄かったりでこれも残念。小杉伍長は別に部下思いじゃないし、片倉兵長は怖いだけの人じゃないし、入来さんは英語がしゃべれるだけじゃないんだーーー!!!
- これは物足りなかったというかはっきり不満点なんですが…
公式がこの映画を「戦火の友情物語」としてPRしてる点。
短い時間の中で、何を「軸」に話を展開させるかというと、田丸くんと吉敷くんだろうというのは理解しますけど、「友情」をアピールするのは何か違くない…?って思っちゃうんですよね。うまく言えないけど、もやもやします。
主題歌について
主題歌は、上白石萌音さんの「奇跡のようなこと」です。
エンドロールで流れたときは、映画の内容を反芻していてちゃんと歌詞を聞いていなくて、
上白石萌音さんの声とピアノの音だけで「ちょっときれいすぎる」と思っていました。
帰宅してYoutubeでちゃんと聞いてみたら泣けてきちゃって。
特に「愛の下に生まれたの 愛が故に散りゆくの」にグサッときました。
実際に戦地に赴いた兵士たちが何を思い散っていったかなんてのは分かるべくもないけれど。
でも、「忘れてはいけないな」と改めて思わせてくれる歌詞でした。

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